包む椅子

2年前に東京に行った時のことですが、六本木にある国立新美術館に行きました。
まだオープンしたばかりだった美術館の建物は故・黒川紀章氏(その頃はご存命でした)の設計、VIは佐藤可士和さんのデザイン、ということで東京に行ったならば、まずは見ておかねば、という感じでした。

東京は地理関係がよくわからないので、ただでさえ歩いていると迷路を彷徨っている感じがしてくるのに、運悪く熱が出てしまっていて、美術館に着いた頃には歩き疲れてフラフラ、エントランスホールの椅子にドタッと座りこんだまま動けなくなってしまいました。

その時座った椅子が、ハンス・ウェグナーの名作、3本足のシェル・チェアーでした。

Three Legged Shell Chair

ハンス・ウェグナーの椅子は、プロポーションが美しいだけでなく、座った時の心地よさが半端ではありません。
熱のせいで意識が朦朧としかけていた私を、シェル・チェアーの極上のやさしさが包んでくれたおかげで、あっという間に眠りに落ちてしまいました。

しばらく眠れたおかげで少し回復しましたが、さすがに広い美術館内をじっくり鑑賞して回る力はありませんでした。

あの場所にシェル・チェアーでなくゴツっとした背もたれのないベンチ等が置いてあったとしたら、かなり辛かっただろうと思います。

思いがけず、椅子の素晴らしさに接することができた訳ですが、今度また行くことがあったら、しっかり美術館と展示品も鑑賞したいと思っています。